製作:日映科学映画製作所 1954年 モノクロ 8分
日本初の女性監督として一生を綴った中村麟子監督。
戦前に生まれ日本の目覚ましい高度経済成長期を生きた監督は、日本の科学、教育映画の発展に貢献した。
女性が男性に混じり仕事をするという考えがまだあまり浸透していない時代に、負けず嫌いの中村監督はそんな考えをもろともせず生き抜いていく。そんな教育映画の基礎を築いた女性監督である中村麟子監督の世界。
この作品は、中村監督と撮影クルーの努力の結晶とも言える作品である。自然の生き物相手にしかも当時の撮影環境では、この監督の辛抱強さがなければこの作品は存在しなかったかもしれない。
当初この企画の話が出たとき中村監督は「ハエなんて嫌、無理」と嫌な気持ちを表したが、まだカメラが収めたことのない世界に中村は渋々了承、その生体を解き明かすために中村監督は自分でハエを飼い、ガラス箱に入れて持ち歩き、バスや電車に乗るときも人に見つからないようにして観察し続け、その生体を研究した。
そして監督と撮影クルーの辛抱と努力の賜物で、ついに無理と言われていたハエの脱皮の撮影を成功させた。
記録映画史上初めてハエの生態を撮影した中村麟子監督と撮影クルーの努力と辛抱の賜物、「はえ」をどうぞご覧ください。
国立予防衛生研究所 理学博士 朝比奈正二郎
製作:石本統吉
脚本:中村麟子
撮影:後藤淳、佐藤登