私の同僚や後輩の中には、小学校当時おこなわれていた巡回映画で「生命誕生」を見たことを切っ掛けにして、生物学の道を選んだ方々がおりました。また、現在科学映像館でデジタル化され再配信中の「68の車輪」を大学時代に見て、自分の進路を決めた若者にも、フィルムのデジタル化を依頼している企業で先日お会い致しました。往年のフィルム映像であっても、過去の想起だけではなく、いまだ未来への発想や好奇心をももたらす効果を実感しています。
また、昨年ノーベル化学賞を受賞された吉野彰氏は、小学校時代先生から勧められた「ロウソクの科学」を読んで将来は化学者になろうと思われたそうです。子供たちは常に夢と好奇心を持って欲しいと述べられていました。科学映像館で配信中の作品にも、子供たちの夢と好奇心を呼び覚ます作品が多々あります。
さらに、科学映画監督の父、小林米作さんは、「科学映画としては、一人だけの空間でナレーションもアニメも音楽もない映像を楽しめるものが理想形であろう。映像には制作者側ですら気付いていない、さらに多くの情報が秘められている。人それぞれにそれを発見し、汲み取ってもらいたい」と語られていました。映像はまさに情報の宝庫です。
これらのことから「ロウソクの科学」の映像版とも言えるものを立ち上げたいという思いに繋がり、科学映像館の子供版として「かがくのふしぎ」を企画いたしました。子供たち自身による発見を促すためにまずは無音声で映像を観て、そののち音声付で内容を理解しまた大人やお兄さんお姉さんと話し合う切っ掛けになるような仕組み作りを進めています。
科学映像館理事長 久米川 正好
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