第23回日本科学技術映画祭 優秀賞
科学技術庁長官賞受賞
日本産業映画賞受賞
文部省選定
優秀映画観賞会推薦
日本ペンクラブ推薦
製作:大和映画社
1981年 カラー 43分
インターフェロンの生産の仕組みを、抗ウィルス作用を明らかにしてゆくとともに、インターフェロンが生体の自己防御機構を活性化する働きをもっていることを実験で証す。現代(当時)の基礎医学の最先端を映像でわかり易く解説した作品。
東北大学医学部助教授 海老名卓三郎
東北大学医学部教授 石田名香雄
東北大学医学部細菌学教室 山口高弘/麻生久/栄井明/斎藤元男
撮影:佐伯勝/山口典昭
アニメーション:渕脇国盛
録音:山崎新司
解説:石野倬
製作:鶴岡耕造
脚本・監督:田部純正
◇この映画について◇
1957年以来抗ウィルス剤として開発されてきたインターフェロンが、最近抗腫瘍剤として期待されるようになり医学薬学界を賑わすようになった。しかし「インターフェロンとは何か」との問に正確に答えられる人は多くない。そこでこの映画はインターフェロンはどのように産生され、どのような作用があるのか、更にインターフェロンとガンとの関係はどうなのか、などについて映像を通して解ってもらうよう企画されたものである。
この映画の見どころは、なんといっても、世界で初めてNK(ナチュラル・キラー)細胞の正体を把えたことであろう。インターフェロン誘起剤投与によって活性化されたNK細胞が、単なる球形の細胞ではなく、オタマジャクシの形態をして、ヒルのように足をのばして、ガン細胞に強力に吸着していることを、ほぼ1年に及ぶ撮影の最終段階で最も解像力の優れた40倍の対物レンズを使用した最新の倒立位相差顕微鏡第1号機によりとらえることに成功し、さらに世界ではじめてマウスのNK細胞(脾臓細胞からマクロファージ、Tリンパ球、Bリンパ球を除いたリンパ球)がマウスのYAC-1という球形のリンパ腫ガン細胞を殺す瞬間をとらえることに成功している。すなわち本当にキラー細胞であることを示したわけで、その功績は大きい。さらにインターフェロンによって活性化されたマクロファージがリンパ腫ガン細胞を飲み込むところや、大きな黒色腫ガン細胞をNK細胞とマクロファージの協同作用により殺すところなど、ガン細胞との闘いを顕微鏡撮影により鮮明な映像を通してとらえて巧まずして一つのドラマとなっている。
これから医学を志す人や、インターフェロンやガンに興味をお持ちの医学薬学関係者は是非見ていただきたいことはもちろん、科学一般教養の映画としても優れたものなので、この映画を通して研究の道筋を学んでもらえれば幸いである。
(東北大学医学部助教授 海老名 卓三郎)